照る日曇る日(005)

 森鴎外は、明治から大正にかけての文豪、医者としては大先輩でもある。前回触れた「大逆事件」の結末にも、ある程度批判的な見解を持っていたが、山県有朋とも知己があり、評論などでは韜晦とうかいな表現に止めざるを得なかったようだ。
 そんな彼の子どもが、二人、百日咳にかかったことがある。1歳にもならない弟は命を落とし、姉も重篤な状態であった。その姉への対処で、「安楽死」問題が持ち上がった。幸い奇跡的に命をとりとめるが、安楽死を容認したのは、鴎外本人だったのか、誰だったのか、鴎外の二人の娘で異なった見解があり、今では大きな謎である。
 抗生物質もワクチンもなかった明治時代には、百日咳は恐れられていたが、実は今も根本的には変わっていない面もある。病院勤務時代、「普通の咳」を主訴に生後1ヶ月の子どもが、受診、念の為に、検査の指示をだした途端、処置室から看護師の「せんせ~!この子、息していない!」との悲鳴があがった。すぐに気管にチューブを入れ、呼吸が再開したが、当方も息ができないほどの思いだった。
 掲げた図(国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイトから)で、最近の百日咳の抗体価(抵抗力)を示す。特徴的なのは、年齢が小学校高学年から抵抗力が格段に落ちている。実際、百日咳の重症例・死亡例も報告されている。西成民主診療所では、特に、幼若乳児での発生を防ぐために、これから出産をひかえた、母親や父親など家族にも三種混合ワクチン接種を強くすすめている。(自費負担)ぜひ、診療所とご相談をお願いする。詳しくは、西成民主診療所のホームページ(百日咳ワクチン)を参照されたい。

大阪きづがわ医療福祉生協機関紙「みらい」
2025年10月号搭載

いのちを削る自・公・維新の3党合意許せません!

今回、大阪きづがわ医療福祉生活協同組合では、次のような声明を出しました。

政府与党の自民党と公明党は、2025年に向けた経済や財政の基本方針(骨太方針)を6月に発表しました。その中で「OTC(市販薬)類似薬の保険適用外」と「病床11万床削減」を打ち出し、これに日本維新の会は賛成しています。

* OTC(市販薬)類似薬の保険適用外
市販薬と同じような効き目のある薬(OTC類似薬 OTC=OTCは「Over The Counter」の頭文字で、「カウンター越し」を意味します)については、健康保険の対象から外すことをめざしています。医療機関で処方されても保険が使えなくなるため、患者さんは全額自己負担になってしまいます。そこで調剤薬局「こつま」で、負担額の増大について調べてもらいました。

例1)
79歳女性1割負担 430円 → 930円
プラバスタチン5mg 1錠28日
マグミット錠330㎎ 3錠28日

例2)
72歳女性2割負担630円→ 1170円
エピナスチン塩酸塩錠20㎎ 1錠28日
テルビナフィン塩酸塩外用液60g

例3)
49歳男性3割負担1650円→ 3320円
フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg 2錠30日
ロキソプロフェン錠60㎎ 3錠10日
フェルビナクテープ35mg 28枚

例4)
10歳男性0割負担0円→ 1870円
ヘパリン類似物質クリーム100g
フェキソフェナジン塩酸塩錠30mg 2錠30日

赤字は、一般薬局も販売するが、保険薬と同等だが保険がきかない自己負担の薬(OTC類似薬)

当然ですが、薬価が高い抗アレルギー剤や保湿剤になると、負担金額が高くなります!!


図は、OTC類似薬の一例

* 全国の医療機関から入院ベット11万床削減
入院したくてもできない人が増え、必要な治療が受けられなくなります。
看護師や医師など医療現場の雇用に深刻な影響を与えシワ寄せは患者さんに及びます。新型コロナのような感染症の大流行に備えることができません。

いのちを削る政治・政策にキッパリと反対の意思を示すべきです。夏の参議院選挙などで大きな争点になるよう、国民の声をひろげましょう!

大阪きづがわ医療福祉生活協同組合